定年後の現実

定年後の仕事選び:再雇用の給与・評価制度のリアルと企業の対応

saikoyou_kaisetsu_thm_20250309

60歳で定年退職した嘱託社員はどの様な過ごし方をしているか
前回のブログで「企業はシニア社員をどう見ているか(タイトル:企業にとって嘱託社員はお荷物なのか?)」について触れましたが、この中でお伝えした、再雇用後の嘱託社員の実態に関して事例を交えてお伝えしていきたいと考えております。
定年後の進路としては、完全リタイヤ、他企業に転職、独立開業などの選択肢がありますが、今回のブログでは同じ会社に再雇用され、1年契約の嘱託社員として働いたケースを取り上げています。

1.再雇用時の評価制度や給与はどうなっているのか

再雇用の事など考えた事もない50代前半までの方々は、「再雇用」という制度は知っているけど、詳細の待遇に関しては教えられていなかったり、聞いていてもピンと来ていなかったりしているのではないでしょうか?
「評価制度」、「給与」に対して具体的な他社の事例を交えて、実際の現場がどうなっているのかをご説明していきます。

1-1.「評価制度」に関して

再雇用の嘱託社員の契約は殆どが1年単位になっています。65歳までの5年間の雇用は義務化されましたが、正社員雇用の様な確実性はありません。評価によっては、再契約が出来ないケースも出てきてしまいます。
では評価制度はどの様になっているのでしょうか?
実際は再雇用者に対する評価制度が整備されていない会社が殆どです。従って何をしていても通常の状態では評価制度がないので給与も待遇も上りもしなければ下がりもしません。但し給与だけは毎年、段階的に一律基準で下げていく会社も多く見受けられます。更に、会社の業績によっては契約更新しない場合も出てくるため、常に不安と隣合せで務める人が多くなってきています。
人手不足の世の中で再雇用社員にも活躍の場を求める必要が出ているのですが、会社の制度を変更するにも、若手優先の考え方があるので、再雇用者まで手が回らないのが現実で、どうしても後回しになってしまうケースが多く見られます。
「働く意欲」や「雇用の平等性」を考えた時に適切な評価制度が必要になってきますので、早期に各社が制度の整備をしていく必要があるのではないかと考えております。

1-2.「給与」に関して

大手から中小企業まで複数の会社の給与実態を調査しましたが、結結論から申し上げますと、年額240万円というのが一つの基準になっているようです。専門性が認められればもう少し高額な給与を提示する会社もあるようですが、それでも現役時代からは30%から40%のダウンになります。増額するケースは調査の段階では聞いたことがありません。
これも評価制度が整備されていないという事と関係してくるのですが、評価と給与のレンジが60歳を境に無くなってしまう為、定年後は、人を見るのではなく全て一律での取決め事項に則って運用されてしまうケースが多々見られます。60歳で定年し、退職金は入り再雇用で5年間は働けるから、経済的にも何とかなる、と思っている人も多いと思いますが自分の会社では、いったいどのくらいの条件で働けるのかは確認をしておいた方が良いと思います。

確認事項A社B社C社
定年制度はありますか?ある60歳ある60歳ある60歳
再雇用制度は準備できていますか?制度あり制度あり制度あり(65歳まで、毎年更新)
定年後の給与体系はどのようになっていますか?事業部が再雇用時の給与を決める。業務内容は変わることはない。役職は変わるかも。定年になった時にたまたまJOBがあれば給与維持もある。(基本的な給与は240万円)担当業務に応じて都度協議。基本給は変更はしていない。60歳時の職能給に応じて2種類の処遇になる。一般職:240万円
専門職600万円
定年後の再雇用の制度がある場合、説明会は開いていますか?親会社がグループ会社を集めて実施している?把握していない該当者に個別で面談をしている該当者に個別で面談をしている
上記の説明会はいつごろ(何歳のとき)開催しますか?説明会開催時期は不明、半年前に本人の意思を確認し給与を提示する。原則58歳、直近半年程度から当人と話をし、2ヶ月前までに決定する59歳以降随時
再雇用者の働く環境はどのように変化したでしょうか?給与はだんだんと下がっていく形になる。240万円〜700万円程度。各人の能力、意思と会社の状況による各人の能力、意思と会社の状況による

通常文字:同等ケース オレンジ文字:悪いケース 緑文字:良いケース
表1:再雇用者の待遇調査結果

2.仕事内容の変化

再雇用の仕事内容に対してはどのような変化が見られるのでしょうか?
実例のパターン別に見ていきたいと思います。

2-1.仕事内容に変化がない場合

「同じ仕事をしてね」と言われるケースが意外と多いのですが、同じ仕事をしている人の不満や想定とのギャップにはどのような事があるでしょうか?
先ず、大きな不満として、同じ仕事で責任も持たされるので一見は
何も変わらないように見えますが、給与が減額されるケースがほとんどです。従って、モチベーションの低下が顕著になります。多くの不満はここに尽きると思います。
その他としては、仕事内容は同じだけれども裁量権は無くなり、かつての部下が上司になるケースです。一歩引いた形で、良い関係性を保てればいいのですが、大抵の場合プライドが出てしまい、反発心や、喪失感が充満してきてしまい、時には怒りがこみ上げてくる、
こうなると、毎日の仕事が楽しくないですよね。
少し我儘になったとしても、人生は他者にしばれられるのではなく、自分の人生を歩みたいものです。

2-2.全く異なる仕事に就く場合

極端な例で話をすると、現場のライン業務に就くケースです。
仕事に貴賤はありませんが、今までの仕事内容が華やかであればあるほどそのギャップを痛感する事になると思います。
年と共に体力も低下しますので、立ち仕事は辛く、しかも工場が地方にある場合は、単身赴任となる事にもなり、思い描いていた定年後の自分の人生との違いに戸惑うケースが出てきてしまします。

2-3.何も仕事を与えられない場合

実はこのパターンが1番、精神的にはきついです。
朝、会社に出社して何をすべきかわからない、会社からは定年前に若手指導をして欲しいと言われていても、相談に来る若手もいないし、自ら指導をしようものなら煙たがられてしまい、余計なことをしないで欲しいといわれてしまう。
会社にいるのも辛いけど、家にいてもやる事がなくて、自分の気持の置き所をどの様に保てばいいのかといった悩みが出てきてしまいます。皆さんこんな状況想像できますか?
「楽でいいじゃん」と思われた方もいるかもしれませんが、実際に経験すると居場所がない事の厳しさを痛感すると思います。

3.現実を知って対策を講じよう

このシリーズのブログで書いてある事は、色々な企業や再雇用者の方々にヒアリングをして得られた話になります。
この様な現実から目を逸らすのではなく、しっかりと直視しながらご自身として、どの様な対処をすべきなのか?を考えて、事前に実行に移していくことが大切になってきます。
皆さんのキャリア・人生をあなた方のものです、人ごとにせず自分事として捉えた取組をしていきましょう、ご連絡をいただければ初回無償でご相談に乗らせて頂きます。

次回は雇う側と雇われる側のギャップがなぜ生じるのか、に関して事例を交えながらお伝えしていきたいと考えています。

キャリアプランについて相談してみる

定年後もいきいきと生活するためにはどのようなスキルや何からはじめたら良いのかはわからないものです。国家資格であるキャリアコンサルタント保持者がそのお手伝いをします。まずはお気軽にお問い合わせください。

キャリアプランについて相談してみる